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実は日本語を読めない人達
こんにちは、蒼生です。
自分はゲームを作っているのですが、ゲームを作っていると、大人でも基礎的な漢字を読めない人が多いことや、言葉を想像以上に知らない人が多い事に気づきました。おそらく学力的には小学生か中学校1,2年レベルじゃないかと思います。そのため、同じ日本語を読んでも理解できないことが多いようなのです。日本語はそれなりに複雑な言語なので、そういう人たちは読めない文章は読み飛ばしたりするという事に気づきました。(その結果、話の筋がわからなくなったり、次の目的地や謎がわからなくなって変な迷い方をしはじめる。昨今コンシューマーゲームのアクション以外の難易度が大幅に下がっているとか説明過多になっているというのはそれが原因と思われる)ゲーム開発の方はその問題に気づいたので大幅に漢字をへらしたり、かんたんな物言いに変えたりして対策をしています。でも伝えたいことが哲学的だったり、社会的なことだったりするので、それでちゃんと伝わっているのかは正直わかりません。この問題を解決するための一番いい方法はフルボイスにして、そもそも文章を読ませないことなのですが、さすがにそれは莫大なコストがかかるので大企業でもない限りできません。
ゲーム開発をしていて気づいたこの問題は、たぶんあらゆる分野に当てはまると思います。
日本の識字率はほぼ100%なので、当たり前にみんな文章を読めると思っていたのですが、「文章を読める」レベルには相当なグラデーションがあるようなのです。(たとえば、漫画は読めても本は読めない=理解できないというレベルの人は割と身近にいます)
しかし、この問題についてよく考えてみたのですが、言語を学ぶとき、我々はまず耳から情報を取得します。赤ん坊がそうです。文字を読めないので、耳からまず情報を取得し、少しずつ単語をおぼえていきます。そして、学童年齢に達したら小学校等にはいって文字を学び、今まで聞いてきた単語や文章を、第三者にも伝えられる言葉として学び始め、次第にさまざまなことを言葉に変換できるようになっていきます。
外国語を学ぶときも同じような過程をたどります。
つまり、日本語の文章を満足に読めない人達は、文字という視覚情報からの変換が不得意なだけで、耳からの音情報なら処理できるのではないか、それゆえ日本にきたばかりの外国人と同じように、文章は読めないけれど音声でなら理解できるのではないかと考えました。だから、最近ブログを動画にして読まなくてもいいようにするという実験をしています。
書き言葉と話し言葉の文章密度の違い
まずブログの内容を動画にしてみてわかったのは、書き言葉の文章密度と話し言葉の文章密度はまったく違うということです。
書き言葉の文章密度はとても高いので、短い文章で100の情報を伝えることができます。逆にそうしたほうが読みやすい文章になります。だから文字が読める人達はあえて本を選びます。動画や音声媒体よりも、密度が高いのでそういう人々は好んで本を選びつづけ、出版不況と呼ばれる状況にあっても、本は本として求められつづけています。
逆に話し言葉は無駄の塊のような文章になりがちです。おそらくその無駄をあえて作ることで、脳が情報を処理するための「時間」をかせいでいます。話し言葉は無駄な事をいかにリズムよく間に挟むことができるかが勝負です。そして、話し言葉は情報の密度を上げることが難しいので、内容自体もかんたんなものになりがちです。本と同じことを話し言葉で説明しようとすると2倍から3倍の量が必要になるのではないかと思います。
つまり、話し言葉と書き言葉は、似ているようでまったく違う性格をもっているということです。
分かりやすくするためには文章を水増ししないといけない?
ブログを音声に変える実験は、ブログの文章をそのまま読み上げる形でつくっています。つまり書き言葉です。書き言葉を音声で理解できる人は、おそらく文章を問題なく読める人です。文章を読める人は、わざわざ長い時間をかけて音声を聞いたりはしません。文章を読めばはるかに短い時間で情報の処理、取得ができるからです。
ブログを動画にする実験は、かんたんだからとりあえずやってみました。でも、このことに気づいて、もし本当に対策をするなら文章を大幅に希釈しないと意味がないんじゃないかとも思うようになりました。
それはかなりめんどうです。面倒ではないから動画を作る実験をしてみたのに、文章を書き言葉では理解できない人向けに作り直すというのは相当な手間がかかります。AIに文章の希釈をやらせるという方法もありますが、チェックして修正しないといけないのでそれもけっこう面倒です。しかも動画の尺が本当に長くなることが予想されます。そんな長い動画、見る人いる?という素朴な疑問があります。
でも実験してみないとこのことにも気づけなかったので少しだけプラスです。
しばらくはそのままの文章を使って動画を作ると思いますが、いつか暇なときに内容を希釈してリメイクしてみたりするかもしれません。
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